| 作品一覧 |
| 作品 | 解説 |
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1・婦人相学十躰 浮気の相
中年女の美しさが画面一ぽいに匂つている。歌麿の脂ののりきつた寛政頃の逸品で、ほかに「団扇をもつ女」「鏡を見る女」「指を折る女」と四図がある。
夏の一日、湯上りの櫛巻の髪に、淡い色の浴衣がけの年増女の姿態は、無造作の中に若い女にはみられない異つた情趣が漂つて、みるものをうつとりとさせる。
明るい白きらに、淡色最少限の色数でこれだけ効果をあげた歌麿の技巧は非凡というほかない。
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2・団扇もつおひさ
浅草観音境内の水茶屋難波屋の娘おきたと並び称せられた美人。おきたの冷めたい美くしさにくらべて、あどけなく愛くるしい。
両国薬研堀米沢町の煎餅屋高島長兵衛の娘で、歌麿が好んで描いたモデルの一人である。
きら摺りの背色に女の初い初いしさが浮きでて、寛政の三美人と謳われたおひさのこの絵柄は、当時の庶民の間にさぞ流布されたことであろう。
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3・姿見七人化粧 おきた対鏡
高島屋おひさをモデルにした全じ趣向の合せ鏡の図柄がある。
江戸で評判の難波屋のお北が、整いすぎる程にととのった白分の顔を、無心にみ入る姿を描いた歌麿は、自分の好みからだけでなく充分に庶民の要請に応えたつもりであろう。
日常生活の中でのお北の姿は、小町娘のブロマイド的役割を果たして余りあろ。
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4・山姥と金太郎 乳のみ
山姥と金太郎の主題で歌麿は約三十種類程も描いている。
享和に入つてからの作品で歌麿が四十歳を過ぎてからのものだが、このほかにも母と子の愛情の交流のさまを色々の角度から描きあげた数多い図柄がある。
どのような理由-心境によるものか測り難いが、それぞれに母と子の血の通つた情感がにじみ出ていて興味深い。
母と子と乳房の三つを画面一ぱいに大胆に描き出したこの図は、この種の数多い絵柄の中での代表作である。
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5・当世踊子揃 鷺娘
いくつかの揃いものとして描かれているようだが、このほかに吉原雀、三番叟、道成寺がしられている。歌麿がとりあげた題材の中で吉原の風俗美を扱つたもの
がいくつかあるが、この組ものもその一つとみられる。背色の黒雲母のなかに、夕顔のように浮きでた踊子のういういしい白い顔が特に印象的で、舞台でみる白鷺の精の美くしさを、踊りのその一瞬にとらえたものであろう。
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6・当時全盛美人揃 扇屋の花
寛政の頃吉原で評判の花魁を十余枚のシリーズとして描いたもので、ここに収めた扇屋の花、雛づる、花妻、若づる、花紫のほかに滝川、玉屋内の小紫、玉屋内し津か、松葉屋内染之助、鶴屋内篠原、越前屋内唐士がある。
それぞれの顔の個性にあわせて描きわけられたと思われる女の姿態の美くしさを、ここで扇屋の花(扇)にみることができる。
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7・南駅は印
湯上りにくつろいだ女の姿態の美しさは、古今を通じて変らないもののようである。
ことに無造作にはおつた浴衣の衿もとからのぞける頸すじから胸もとへの流れるようなふくよかな線、手拭をもつ抜けるように白い腕 歌麿は遊女や町家の娘、または年増女の湯上り姿を数多くものにしているが、いづれもそれぞれの個性と姿態を描いて妙を得ている。
ほかに西駅た印という絵がしられているが、た印、と印などと意味は判然としないが、当時遊客の間で通称されていたものか。
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8・難波屋おきた
浅草観音境内の水茶屋難波屋の娘おきたは歌麿が最も数多くモデルにして描いた評判娘である。高島屋おひさと対象的な顔立ちで、鼻すじから顔全体に整いすぎむしろ冷めたい感じを与える。
寛政時代歌麿が最も脂ののりきつた頃の作晶で、幾多のおきたの絵柄の中でもこれは特にすぐれている。淡藍のひとえに黒濡子の幅広の帯、高く結いあげた娘島田から美事に流れるうなじの線と、全体の構図も申分がない。
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9・娘日時計 未ノ刻
辰ノ刻(午前八時)から巳、午、未、申と午后四時までの五刻に分けて、町家の娘の一日の生活を描いた揃物である。昼食のあと未ノ刻(午后二時)で一服というところであろうか。
この揃物で歌麿は、顔の輪郭の墨線を排して、空摺りと背景の黄つぶしで女のやわ膚の白くふくよかな感じを出そうとしている。
この図ではあごから肩の線までうかしているが、彫りと摺りの巧みさに負うところの多い図柄である。
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10・高名美人六家撰 辰巳路考
六家撰とは六歌仙になぞらえたものであろう。富本豊雛、高島屋おひさ、扇屋花扇、日の出屋後家、難波屋おきたを加えて揃物にした。江戸で辰已即ち東南の地は深川で、深川芸者を辰已芸者ともいつた。
吉原の遊女とは異つた、粋で鉄火な江戸芸者の面目がうかがえる。
このシリーズで町娘、遊女、芸者、若い美人の後家とそれぞれに描きわけて、情趣深いものにしている。
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11・当時全盛美人揃 丁字屋内雛づる、
雛づる−いかにもその名にふさわしい風情の女である。ほつそりと、優しく、可憐な趣がその仕草にもみられる。この11枚の揃物の内この図と越前屋内唐士が同じモデルかと思われる。
うちわと、そのうちわを逆さ持ちにもみ手しながら何かを思い願ってる女心が、黄つぶしの明るい背色に薄い単衣の淡い色がマツチして、美事な零囲気を醸しだしている。
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12・当時全盛美人揃 兵庫屋内花妻
誰からの何のたよりかしらないが、その文をねじって昂然とした面持の花妻、ふと何かにふり返えり思わづ浮かせた片膝、薄墨の着物の下から淡紅の長締伴の柄模様が透けて、
黄の背色の中で、白く浮いた顔や腕と、これに下着の色が映えてポーズの美事さとともに画面一ぱいの色気が漂つている。この揃物のの中でもことに傑ぐれた作品である。
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13・婦女人相十品 文読む女
婦女人相十晶は本図のほかに本集におさめた煙を吹く女、ポツピンを吹く女とほかに一枚の四図がある。これと浮気の相は色数を制限した単純な配色に雲母の背景で最大の効果をあげた点、中年女の魅力を充分に描きつくした点など好一対の逸品である。
全体の調和の中で帯の色がアクセントとなつている。外題がないのでどのような発想によるものか判然としないが、歌麿の円熟した技巧がうかがわれる作品である。
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14・娘日時計 午ノ刻
午ノ刻(十二時)湯上りの図である。無線摺りにした顔の輪郭に本図では目鼻の線も殊更に淡くひいてある。娘日時計の五枚の構図はみな女二人の七分身でまとめられているが、構図や配色の点でこれは一番纒つているようである。
かき上げられた髪、一人は立姿で耳もとのしめりに手拭をあて、 一人はしやがんで朱唇に糠袋をくわえながら手拭をしぼるーそれぞれの仕草にも無理がない。
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15・当時全盛美人揃 若松屋内若づる
玉屋内し津かと同一の図である。し津かの図では立膝の腿とそれに絡らむ下着は着物にかくされている。どちらをとるかはみる人の好みによつて異るだろう。
このシリーズで、遊女たちのそれぞれの場面でみせる姿態を性情的に描きあげ、個々の体臭を描きわけようと意図されたものと思われ興味深いが、しかし多少無理にわたる点も散見される。
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16・娘日時計 巳ノ刻
己ノ刻(午前十時)洗面、朝食のあとのみづくろいであろう。本図での特徴は顔の輪郭の墨線を空摺りにして、背色の中に女の柔かく自い顔を効果的にした試みに加えて、鼻の線も無色に、空摺りの手法で凹線であらわしている点である。
カラ摺りは絵具を用いずに、三、四枚毎に板面に湿りを与えて摺る。
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17・当時全盛美人揃 玉屋内花紫
手をくみ、両腕を思いきりのばして物思いの屈たくを軽い溜息とともに吐き出そうとする花紫。黄つぶしの背色に、薄墨を基調にして白と渋い緑に袖口の紅を配して、全体に簡潔にまとめられている。
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18・高名美人六家撰 日の出家後家
朝日屋の後家ともいい、コマ絵の日の出を判じ絵として特定のモデルはないようである。ほかに眉をつけた図もある。
湯上りのポーズとしてほかにも幾枚か似たような構図のものがあるが、髪かたちから、大胆な浴衣の柄模様まで、娘とは異つた美貌の若後家の匂うような色気が発散している。
全体に地味な色調の中で、眉をおとした若々しく整つた顔と、これも身内の若さが溢ふれるような白いゆたかな二の腕が、まことに印象的である。
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19・青楼仁和嘉女芸者之部
江戸時代青楼即ちここでは吉原の各種行事に際して、男女の芸者達が思い思いの扮装をこらして廓内を練り歩き、行事ににぎわいをそえたそうだが、この図はいわゆるこの吉原俄における当時売れつの女たちの若衆姿を描いたものであろう。
浅妻船、扇売、歌吉とあるが、艶麗な女たちの男装がみもので、豪華さをねらつた雲母摺である。
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20・娘日時計 辰ノ刻
辰ノ刻(午前八時)朝起きの二人の娘を配して、すでに洗面を了えた一人が今朝咲ぎの花をめでているそばで、くわえ楊子の一人が花のみづみつしい美くしさに相づちでもうつているのであろう。
この図も、顔の墨線を空摺りにして、バックの色の中にその白くふくよかな顔を浮き彫りにする効果をねらつている。
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21・婦女人相十品 ポツピンを吹く女
文よむ女と日傘さす女、煙を吹く女とこの図の四枚が当初婦女人相十品として出版されたが、ポツピンを吹く女は後に婦人相学十躰に組み入れられている。
バックの白雲母の中に淡彩で下町娘の豊かに愛ぐるしい姿が、簡潔に美事に描出されている。長い袂をひるがえしポツピンを口にふり返つた娘島田は、まことに邪気がない。
ポツビンとはポツペンとも呼ばれたガラス製の玩具をいう。
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22・教訓親の目鑑 ぐうたら兵衛
歌麿の晩年享和の頃の作で十枚の揃物になつている。表現も着想も生き生ぎとして秀れている。ことにこの図は莫連女の性情を余すところなく描き得て妙である。
ただ気になるのは図上の解説で、長々となくもがなの感がある。当時の幕府の取締りを配慮しすぎての結果かとも考えられるが、また反面歌麿の内面的な苦悩の一つの現われとみられないこともない。
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23・婦女人相十品 煙を吹く女
この図の女はどのような種類のものであろうか。まだ稚さの残つた顔にはあばづれた翳はみえず、むしろ拗ねた愛ぐるしさがある。
それでいてこの乳房もあらわにしどけない退廃の姿態はどうしたことであろうか。
この妙にチグパグなものがかえつて一つの美しさを構成している。吐き出した煙が背色の雲母の中に空摺りで浮いてみえる。
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24・娘日時計 申ノ刻
申ノ刻(午後四時)角かくしに支度をととのえての外出は墓参という。ともあれ、この図と辰ノ刻では襟あしも無色の空摺りで已ノ刻では鼻すじにも空摺りを試みているが、このあと歌麿はこのような手法を殆んど用いていない。
一つの試みとして彼が意図したものが、その後何らの成長展開もみずに終つている。
またこのシリーズに娘日時の表題が冠されているが、ここに描出されたエロティシズムには、育ちの良い町娘の風格と品位はない。しかし、これは作品として特異の存在ではある。
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25・青楼七小町 扇屋内滝川
高く結いあげた黒髪に白い肌、涼しい目もとの瓜実顔に点じられた朱唇は、全体の渋い色調の中で勾うようだ。
遊女とはいえ一流の滝川、崩れようとしてようやく支えられたほのかな気品が、哀れに美くしい。寛政末期の作とされている。
当時喧伝された遊女篠原、多賀袖、明石、花紫、白露、嘉瀬川の七図の揃物だが、ほかに歌麿は滝川を数枚描いている。署名に「正銘」の文字がみえるが、歌麿の盛名に模作が行われたものと思われる。
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26・教訓親の目鑑 正直者
歌麿の盛時にみられた女性美の創造的探究の段揩からようやく精神的、肉体的に転機を迎えた歌麿晩年の作、ぐうだら兵衛、ばくれん、不作者等十枚からなる一連の作品の一枚で、美追求の描写から個性的、性格的表現を覘つて新しい境地を開拓しようとする意図がみられる。
この揃物の中でもこの図柄は特に好ましく、乙女心の愛くるしさが、構図と全体の配色の中で美事に描出されている。
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27・婦人手業拾二工 髪ゆい
歌麿が作画上の転機を迎えた晩年の作で、題材を江戸庶民の生活の中にもとめ、働く女の姿を描いたものだが、しかし決してこれをもつて生活詩とはいえない。
働く者の姿を写実的に描写したものではなく、その行き方は大首絵の美人画とイを一にするものだからである。この図で歌麿はこのような場面にみせる女心の表情を、女性二人を配して心憎い筆致で描き出している。
梳きあげられた女のふじびたいも、まことに美くしい。
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28・名所風景 美人十二相
タイトルに「名所風景」とあるが、日本三景といつたようた名所十二を選んで、その一つ一つの風景に象徴される美人を描きわけたシリーズものといわれている。
しかしどの美女が松島か天の橋立か、天の橋立に象徴される女性というものがどういうものか判然としないが、とも角、大首絵も数重さなればマンネリズムにもなろう。
そこで歌麿の主観を通じて特定の風景か想望される貌と個性の女性ーそれは必ずしも美貌とは限るまい。
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29・吾妻美人ゑらみ かんざしさす女
特に実在の個人をモデルにして描かれたものではないかもしれない。シリーズものでもない。歌麿の作品の中で特に喧伝された作品というのでもない。が、これは彼の秀作の一つとしてとりあげられていい。
日常生活の中でいつも眼につく女性の何気ない姿態ながら、「女」の美くしさがふつと胸をうつ。全体の配色の妙と相俟つて、しつとりと娯しめる。
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30・咲分け言葉の花 おちやつぴ
教訓親の目鑑が性情的なものとすれば、このシリーズものは庶民風俗のなかで女性をスケッチしたものといえようか。享和の頃の作。粋でおきやんた江戸の女、負けん気が強くて、涙もろい下町娘の面目が躍如としていてまことにほほえましい。
歌麿の美人画らしい女の体臭はここには見当らたいが、せいせいする絵柄である。ほかにすけべいおぼこ、たわいなし、にくまれ盛り、などが知られている。
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